忘れられない。

川崎医科大学の3年生実習。

特に忘れられない学生がいる。

先週母を亡くした小宮という役。

「母が先週亡くなったので」

「お気持ちお察しします」

少し困った、それでも優しいまなざしが私を見てくれていた。

それから、身体がだるいとか、力が入らないとか、続けても

「あっ、きっとおつらい、、」

「それは、きっと༄♾💲💱♂、、」

「?」

とうとう、何を言ってるのかもわからなくなってきた。

「いえいえ、もうそれはいいんです。とにかくしゃんとしたくて」と返した。すると

「趣味はなんですか?」と、きたもんだ。

小宮は思わず笑ってしまった。

 

ロールプレイが終わっての学生の感想は

「家族のこと(きっと母のことだろう)どこまで踏み込んでいいのかわからなくて、オブラートに包んで言うしかなくて何言ってるのかわからなくなって、困って、いきなり趣味なんか聞いてしまいました。もっとこういう場面に慣れたいと思いました」

小宮としてのフィードバック。

「言葉以上に小宮を思ってくれている想いが伝わっていました。ぐっときました。いきなり趣味の話には、えっ?って思ったけど(笑)

オブラートに包んだり、何言ってるかわからなくなっても、その気持ち慣れないで大事にして欲しいと思います」

 

それを受けて学生は返してくれた。

「初心忘れるべからずで。あっ、何者でもないんですが」

学生は少し照れたように、それでもその表情はとても凛々しく見えた。

私はその表情を忘れたくないと思った。