時を経て。

関西福祉大学看護学科に再び。

前回は3年生で、今回は2年生の演習だ。

大学に入ると、2階の廊下が見える。

その廊下から、白衣を着た学生が何人も私たちを覗き込むようにして見ている。

その学生たちから挨拶が聞こえてくるのだが、演習前なので、さり気に頭を下げながらエレベーターに逃げるように乗った。

離れていても、SPという私たちに向ける眼差しから、興味津々が伝わってくる。

「まるで私たちどさまわりの役者みたいじゃね」と、エレベーターの中でみんなと笑った。

あんなに素直にSPに向ける眼差し。

あっ、そう言えば20年ほど前もこんな体験をした事があった。

三重大学医学部に行った時だ。

廊下に面してガラス窓のある部屋で、SPは控えていた。

すると、10人ほどの学生たちがひとかたまりになって窓からこちらを覗き込んでいる。

そのかたまりが2、3回入れ替わった。

どの学生たちも、興味津々で。なんかこっちも可笑しくて嬉しくなった。

あの時も、どさまわりの役者みたいだとSP同士できっと笑ったのだと思う。

 

「あっ、こんにちは」帰ろうとした時だった。

ロビーに座っていた私服の学生が声をかけてくれた。

「3年生です。こないだはお世話になりました!」

その笑顔に見送られて、振り返りながら大学を後にしようとした時だった。

あの2階の廊下から数人の学生たちが身体を屈めて、私たちに手を振ってくれている。

時を経て、やっぱり可笑しくて嬉しくて。