ツバメ

一昨年の夏、家の軒下にツバメが巣を作りヒナが孵った。

ヒナたちのエサを求める顔が可愛くてたまらなくて毎日見るのが楽しみだった。

そんなある日ヒナがカラスに襲われた。

それからぽかんと空いた巣が悲しかった。

どうにもならないくらい気落ちした。今思い出しても泣けてくる。

昨年の夏は残された巣にツバメは来なかった。

その巣も撤去された。

そして今年の5月はじめにツバメがやってきた。

3羽のツバメが庭の上を飛び回っている。

思わず叫んだ「おかえりー!」

しばらくして、巣作りが始まった。

楽しみ半分、またヒナがカラスに襲われるんじゃないかという不安半分。

複雑な気持ちは押し隠せないままだったけど、それでも巣が出来上がっていく様を思わず写真におさめたりしてわくわくする気持ちが不安を押しのけようとしていた。

そんな矢先、何が起こったのかツバメの巣が落ちてしまっていた。

巣のかたわらには4個の小さな卵が散らばっていて

ほんの少しの黄身が殻の中に見えた。

愕然として見つめた。

気づくと3羽のツバメが頭上を旋回している。

それから1週間ほどツバメは家の周りを飛んだり、近くの電線に止まったりしていた。

そして、姿を見せなくなった。

 

カラスに襲われたらどうしようと不安を抱いていた私は、あの卵を見た時少しほっとしたことを覚えている。

小さなヒナがいなくなるより、まだ傷みが少ない。私はそう思ってしまった。

 

この季節至る所でツバメが飛んでいるのを見かける。

その度に私のこころがちくっと傷む。