2022-06-01から1ヶ月間の記事一覧

倉中看護パート3 時本先生

最後のロールプレイだった。 その看護学生は「ゆっくりで大丈夫ですよ」その言葉を何度も繰り返しながら、福山に触れようとはしなかった。 気持ちも近づいてこなかった。 トイレに行こうと、右手で握る点滴だけが支えだったが、左手でも必死にベッド柵を持ち…

倉中看護パート2 有本くん

「男の子で頑張ってるんやねえ」と、言うと 「ただ男というだけです」と、まっすぐに返された。その反応が正直で、ちょっと恥ずかしくなった。福山も、それから正直になれた。 もう長くない。その気持ちはごまかせない。 有本くんは、福山の肩を支えながらそ…

倉中看護パート1 黒瀬さん

腹水が溜まって、余命短い福山さん。 必死でトイレに行こうとする場面。 学生の黒瀬さんは、ロールプレイの後の感想で 「いい感じの言葉選びが出来ない」と言った。 振り返った時、2つの場面を思い出した。 薄いストールをお腹の上にかけていた。 入院する前…