the other pair

たった4分間のエジプト映画を観た。

少年の足もとが映し出されるところから始まる。

ぼろぼろのビーチサンダルの片方の緒が切れて

少年は人混みを避け、街の端っこでなんとか直そうとする。なかなか上手くいかない。あきらめたように顔をあげると、ピカピカの黒い革靴が目に飛び込んでくる。革靴を履いたその少年は何度も何度も磨きながら嬉しそうにその革靴を見ている。

その時私は街角の少年の革靴を見る眼差しがとても印象に残った。とっても嬉しそうに眺めている。

革靴を履いた少年と同じ気持ちになっているんだろうか。そんな風に思えるほど幸せな表情だった。

その時列車が入ってきて、どうやら街はそのまま駅のホームに繋がっていたことがわかる。

まだ革靴を磨いている少年は両親に急かされて列車に乗ろうとする。と、同時に多くの人々がなだれ込むように列車に乗ろうとした。その勢いで少年の革靴の片方が脱げてホームに落ちてしまう。列車は走り出す。

片方だけのビーチサンダルを履いて、街の端っこに座っていた少年が、ホームに残された片方の革靴のところに走って行き、手に取って大切そうに一瞬眺めたが、すぐさま列車を追って走り出す。

列車の中の少年も、必死に手を伸ばしてなんとか革靴を受け取ろうとする。

ホームを走る少年は願いを込めるかのようにその革靴を列車に向かって投げた。車体に当たってその革靴はホームに再び落ちる。

すると、列車に乗った少年はもう片方の革靴を脱いでホームに投げるのだった。そして、笑顔で手を振る。

ホームで、その革靴を手にした少年は列車に向かって手を振り返す。

2人の少年の笑顔があたたかく余韻を残した。