人間というのは愛すべきもので。

大した話でもないんだけど、子供の頃に聞いて印象に残っている話がある。

警察に捕まった泥棒が紐で繋がれていない片方の手を、大きく振って歩いていたという話。

今もなんか可笑しくて、その泥棒のことをあたたかい気持ちで勝手に想像したりして思い出すことがある。どんな気持ちで大腕振って歩いたのかねえ。

そんな時にも見栄張って。

滑稽だけど、なんかこういいんだよね。

その話をまたふっと思い出す出来事があった。

 

初めて入ったお蕎麦屋さんでのこと。

どれもこれも値段が高くて驚いた。

1000円以下はざるそばとかけそばくらい。

そこで私はざるそばを選んだ。

運ばれてきたざるそばは見る限り普通のざるそばで

天麩羅やら小鉢が乗ったお膳が運ばれていくのを横目で見ながら、そのざるそばを口にした。

ずるずるっ!ずるずるっ!!

自分でも驚くほど大きな音。

美味しいぞ。ざるそばだけでも美味しいぞ。

いや、ざるそばだけだからこそ美味いんだよ。

天麩羅ついてなくったって美味いんだよ!

それくらいの勢いが思わずすする音に乗ってたかなあ。

 

ああ、なるほど愛すべき人間です。