2年前に胸部食道がんの手術をして、2度目の入院。少しだけ体重が増えたので退院できた患者役。
退院後、鼻にチューブを入れて栄養剤を注入している。食事は全粥とミキサーした副菜。
独身で調理師をしていた彼女は自分で料理をしている。
そこに管理栄養士が訪問してくる。
1人の管理栄養士とのやり取りが忘れられない。
フードモデルを取り出して言った。
「全粥と言われましたけど、あっこれは普通のご飯です」そのご飯のフードモデルを思わず私は手にとっていた。「懐かしいなあ」2人で少し笑った。
「体重変わらんからな。先生に言っといてな。」
照れ笑いをしながら、その管理栄養士に伝えた。
だまったまま、私をじっと見ている。
そのまま少し時間が経った。
「そんなにつらいですか」
心のなかで泣けた。
「何言ってんの。食べるよ。生きるためにな。」
ごまかしながら、それでも込み上げるものは抑えられなかった。
食べる量を知るためのフードモデル。
でも、その管理栄養士が手にしたフードモデルには、私の毎日が込められていた。
元気に白米を食べていた私。今は少しの全粥を必死で食べている私。
そんな私を想像してくれたのだろうか。
ただの物ではなかった。ちゃあんと命が込められていた。
こうして思い出しながら文字にしているだけで
また泣けてくる。