竹内として感じたこと その2

「この病気に対してどう考えておられますか?」

いきなりの直球?!

でも、その形式ばった質問には程遠い学生の柔らかさを感じた。

姿勢をきちんと正して座る彼女は質問をどんどん続けた。

「ご趣味はありますか?」

「猫の保護活動してるからね。猫のことみんなと話すことかなあ」

「猫ちゃんの写真とか飾られたらどうですか」

スマホの中にはいっぱいあるよ」

「それは良かった」

「、、今は見るのはつらいけど」

「....... 。」学生の質問が止まった。

少しの沈黙の後だった。

「これから先のことどう思われていますか?」

その直球の質問とは裏腹に彼女の動揺を感じた。

「もういいかなあ。虹のたもとで先に逝ったみんなが待ってくれてるって。主人にも会えるし」

再びの沈黙の中、涙が流れた。

そこでロールプレイが終わった。

気づくと学生の目にも涙が溢れていた。

 

「どこまで踏み込んでいいのかわからなかった。竹内さんがこれからどうしていきたいのか聞きたかった。明るい方向に変えていけたらと思った。でも虹のたもとの話をされた時、ああそうなんだなって何も言えなかった」

「竹内として感じたことです。質問の内容がまるでアンケート?みたいな感じもして、えっ?って思ったけど、真っ直ぐに聞こうとしてくれている気持ちに応えたかった。スマホで見るのもつらいって言った時、何も返ってこなくてね。もういいかって。

もう頑張って質問に答えなくていいかって。だから虹のたもとの話をしたんです。感想の時に“ああそうなんだな”って感じてくれたって言われて。本当にそれが伝わってきたんです。もう頑張らなくていいやって思えた。〇〇さんにただ一緒にいて欲しい。竹内は次の段階にいける気がしています」

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フィードバックの間も彼女の姿勢はきちんとしたまま、それでも何度も涙を拭いながら返してくれた。

「情報収集のために聞くのではなく、答えを求めて聞くのではなく、コミュニケーションの中で患者さんの気持ちを感じたい。その方が大切でした」

彼女の声が凛と響いた。