気づきが生まれる瞬間。

余命3ヶ月の鶴田は、もう良くはならないのがわかっていて、リハビリには行きたくない。

理学療法学科の学生は、その鶴田に話を聞きに来る。

ある女子学生とのロールプレイで、鶴田は絞り出すように伝えた。

「もう良くならんから」しばらく沈黙が続いて

学生は言った。

「つらさは伝わってきました」それから

目標を立てて頑張りましょう。リハビリを続けてトイレに行くために少しでも、、そんな話が続いた。

「、、行きたくないんよ」

もう言葉は返ってこなかった。その分学生の気持ちが鶴田になだれ込んできた。

 

ロールプレイが終わっての学生の感想。

「質問に対し鶴田さんが丁寧に答えてくださって嬉しかった。行きたくないって言われて何か前向きな言葉を返したかったけどできなかった」

 

鶴田としてのフィードバック。

「○○さんが丁寧に大切に質問をしてくれたから鶴田はそれに応えたんです。行きたくないって言えた時にだまってくれた。あの時やっと○○さんの私を想う気持ちがぐっと伝わってきました。あの時鶴田は泣きそうでした」

 

フィードバックを受けて再び学生が言う。

「鶴田さんが行きたくないって言われた時にうまく言葉を出せば良かったと最初の感想で言ったけど、今は変わりました。だまってもいいんだな。いるだけでもいいんだなって」

 

あの時学生から鶴田に確かになだれ込んできた気持ちが、こうして言葉になる。

それは学生自身の気づきになった。