ごまあんかけ、五目あんかけ

何年ぶりだろうという懐かしい私の好きなうどん屋さんに行った。

久しぶりなので、メニューも新鮮だった。

メニューのトップに提示されたごまあんかけがまずは気になった。そしてやっぱりごまあんかけに決めた。

厨房の中が見える。

店主の働く後ろ姿は変わらないなあ。と、しみじみしながら眺めていた。

うどんが運ばれてきた。

“なるほどこれがごまあんかけか”

小皿に大根おろしと土しょうがの小さな山が丁寧に盛ってある。

熱々のうどんをふうふう息をかけながら一口食べる。

“美味しい~、やっぱり美味しい~、、うん?”

ちょうどそこに伝票を持って来られたお店の人に向けて、こころの?がそのまま声になっていた。

「これって、ごまあんかけですか?」

「いえ、五目あんかけです」

「えっ、ごまあんかけ頼んだんですけど」

その瞬間、厨房の中で店主があわてて私の方を見て

作り直しますと言わんばかりに頭を下げられた。

注文をとってくれた若い女性もすぐさま

「すみません!私が聞き間違えました」

と、謝りに来られた。

自然に反応して、そのまんま声に出した私は

反対に申し訳なくなって。

「いやいや、美味しいです。これで充分です」

と、箸を止めずに伝えた。

人々の自然な反応が、自然な空気の流れとなって、それがあまりにも優しくて。

五目あんかけがより美味しくこころに身体に沁みてきた。