看護学科で、終末期の入院患者、中井として6回のロールプレイをした。
ファシリテーターの西村先生の言葉がこころに残った。
その学生は冷静に振舞ってるいるように見えた。
趣味はなんですか?不安はなんですか?
表情が変わらない。質問が続いた。
中井は言った。「不安というか、ここで死にたくはないんよ」
ほんの少し反応してくれた気がした。
そして、好きな花はありますか?という質問。
フィードバックの後に学生は泣きながら感想を言った。「お話をさせて頂こうと思って。でも目的を持って来ていない。どう返したらいいのかわからなくて、話を違う方向に持っていった」
西村先生「中井さんが言った言葉に、何を思って言われたのか、想いを馳せる。こころがざわついたでしょう。目的を持ってシャキシャキ喋るのが理想なのかもしれない、、目的を持って構える必要はないよ」
その学生は、自分のおばあちゃんの話をしてくれた。楽しそうに見えた。
ドライブが好きなんですか?果物が好きなんですか?
カルテに書いてあることを聞き続けた。
「元気だった時はね。好きだったかなぁ」やっとそう返した。
中井は、ずっと学生に気をつかって言葉を選んでいた。
フィードバックの時、笑顔ではなく、やっと真剣な表情で私を見てくれた。
「無理に明るい話にしようとしたのが違ったんだとわかりました」
西村先生「マイナス感情を持ってはいけないと思っているのかなあ。中井さんの反応を見ていて、私も途中つらくなった。看護する者は、負の感情にこそ向き合わないといけない」
忘れらないロールプレイがあった。
初めからハイテンションだった。
「中井さん!空が見えますか?綺麗な青空です!雲がゆっくり流れています。少しは元気になるかと思って。また見てください!」
そのハイテンションは続いた。
「ごめんね。ついていけなくて、、」
学生の表情がぱっと暗くなった。しばらく沈黙があった。
「好きな季節はなんですか?」またテンションを取り戻したように、明るい声だった。
答えたとしても、これ以上、何事もなく返されるのはつらすぎた。
フィードバックで、その気持ちも伝えた。
学生は泣いていた。「中井さんをつらい気持ちにさせてはいけない。明るい気持ちにさせたかった」
西村先生「つらかったって、それが中井さんの気持ち。明るい気持ちにさせようと、準備してきたことを話し続けた。でも、中井さんはそうではなかった」
「つらい気持ちにさせちゃったって、それは自分本位だよ」
全体のまとめの時に、西村先生はこう結ばれた。
「自分だったらどう向き合えるのか。それが今回の大事な学びだと思う。共感しないとダメ!という固定観念はいらない」
「今の自分をしっかり認めてあげて欲しい」
かなりこころが痛むロールプレイとなった。
でも、西村先生のひとつひとつの言葉に宿る強さとあたたかさに、中井も、SPの私も救われる想いだった。