隠れ蓑。

初めての薬局に入るとすぐにスタッフが近寄って来た。

「薬で困ってることはありませんか?」

「ん?」

笑顔のまま、私を見ている。

「今?」

「はい!」

「今はないかな」

「ではかけてお待ちください」

声のトーンは変わらない。

しばらくして、そのスタッフがやって来た。

「先発薬とジェネリックとどちらにされますか?」

マニュアルだよね。ずっとそうだよね。

こころの交流ないよね。

 

定期購入していた美容クリームを解約するために電話をかけた。

解約する理由を聞かれたので、少し迷いつつも

申し訳ない想いで、効果があまり感じられないことを伝えた。 

「もうしばらく使って頂いた方が、効果が表れると思いますが」

これまた申し訳ない想いで、それも考えたけどやはり解約しますと伝えると。

「ありがとうございました」と、すっと返ってきた。声のトーンはまったく変わらなかった。

あっという間に解約完了。

 

後から思う。

私は申し訳ないないなあって一人あたふたしながら話したけど、あちらはただマニュアルを使ってたんだなあ。

マニュアルも大事だけど、そこにこころがないと

冷たいよなあって、よく言ってきたけど。

電話一本でやり取りするのに、どんな事を言われるかもわからず、怖いだろうなあって思った。

マニュアルがあればこそ、自然な形でやり取りができるのかもしれない。

 

コミュニケーションでのマニュアルって

自分を守るためにも大事なんだなあ。きっと。

今更ながら、ふとそんなことを思った。