桃たち。

桃農家に嫁いで5年目の夏。

毎日毎日朝早くて、袋かけの重労働は続き。

収穫の時の炎天下の暑さは尋常ではなく。

その中で桃たちは、待ってはくれない。

桃が一気に育つと、発送に追いつかず。

夜なべが続き。

雨が少ないと実が大きくならなくて、ご注文の玉数にならないからとお客様に謝り続ける。

 

それが自然を相手にするということ。

それでも、桃たちがずっと教えてくれていることがあった。

―そのままでいい―

同じ枝で、熟れ方が全然違ってもいい。

大きくならなくて青いまんまでもいい。

枝で過熟になって、そのまま土にかえすこともある。それでもいい。

何があっても、桃たちはただ桃たちだった。

その中で、こころ揺れ動かしながらくたびれ果てる私。

でも、確かに一緒に生きていた。

ずっと桃たちに許され

ずっと桃たちに見守られていた。

私は、いま、そう思う。

 

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