初めてのクリニックで、年配の女性が
「字が読めんのよ」と、大きな声で訴えていた。
「先生に聞いてください」と、返す受付に
「字が読めん言うとるんよ。書いてくれたらええが」と、声を荒らげた。
診察室から若い男性の看護師が出て来て
症状は良くなってます。大丈夫ですから。という内容を厳しい口調で話した。
「そうですか、、家に帰っても誰もおらんから心配で、、」呟いたのが聞こえた。
もやもやした。でも、ただその様子を眺めているだけの自分だった。
その2日後。
岡山から桃太郎線に乗り込むと、すでに座席がほとんど埋まっていた。
やっと空いた場所を見つけて座ると
真向かいで1人の女性が爆睡していた。
その爆睡の仕方は明らかに今乗って寝たのではないこともわかった。
その女性の隣に座った学生も、ちらちらと見ている。どうしようかと困っているようだった。
だんだん人が増えて、爆睡したままの女性が見えなくなろうとして、私ももう見ないようにした。
その時だった。「岡山に着きましたよ。降りないといけないんじゃないですか!」1人の青年が大きな声を出した。
女性は驚いて立ち上がり、何も言わずに電車を降りて行った。
私はまた傍観者だった。
もやもやしているのに、立ち上がれなかった。
続けての体験が、少し重く私の中に残った。