「何が変わったんですか?」
最後のまとめでSPの感想を言う前、毎熊先生からマイクを渡される時に、つい聞いていた。
「介護大変だと思います。何かあったら遠慮なく相談してください」
ロールプレイの始まりに、そんな事を言われるのは全く初体験だった。
いつも教科書が目の前にあったのに、学生たちは、目の前の患者を見ながら話している。
「前回、頷きが多いと言われて意識しました。話してるとつい焦ってしまって。でもまた、あっ!やっちゃったと思った」
その学生の頷きは、彼女らしさだと思った。
一生懸命聴こうとすると自ずと頷きの回数が増えるのだろう。
フィードバックの後、SPとして付け加えた。
「やってはいけないと思ったらしんどいよ。それが個性じゃないかなあ。一生懸命聴こうとするから思わず出てしまうって気づけたことがすごいよ」
「なるほどー」ゆっくりと反応したその言葉はなんとも柔らかかった。
またある学生は
聴いてくれてる!と充分過ぎるほど伝わってきた。ところが不思議なくらい患者の私ではなく左上を見ながら話をするのだ。
「目を合わせるのが苦手で。どうしても合わせられない。自分もあまり目を合わせられたくないから」学生の感想だ。
またSPとして付け加えさせてもらった。
「目を合わせないといけないんではなくて、話を聴かせてもらおうって向き合ったら思わず目が合うんじゃないかな」
その時、学生はしっかりと私と目を合わせていた。
学生たちが気づいていくその空間は
愛と思いやりに満ちている。私はそう感じる。
最後に毎熊先生の言葉だ。
「気配を感じたり、目の前に患者さんがいるというその関係性の中で、患者さんが話せて良かったなって思ってもらえたら、それでいいんです。薬剤師として何か言わなきゃいけない、何かしなきゃいけないってつい思ってしまう。でも、それは今でなくていい。後からでいいんです。今日感じた生身の体験を大事にしてください」
2020年、マスクをしてパーテーションがあって。
それでも対面でロールプレイができたこと。
忘れないでいたい。