何を願ってきたの?

倉敷中央看護専門学校での演習。

肝癌末期で腹水も溜まっている福山は

トイレに行くためにナースコールを押した。

その学生はそばに来てくれた時から、その人だった。福山もずっとただ福山でいれた。

何度も静かに込み上げていたけど、学生と話すのが楽しかった。

「両足持っておろしてくれる?」

「肩貸してくれる?」福山は素直に思わず甘えていた。

動く度につらそうにしている福山に

「お腹つらいですね」

「足も浮腫んでつらいですね」

その学生はそっと語りかけてくれた。

ロールプレイが終わっての感想は

「福山さんが自然だったので、私も自然でいれた」と。

「それはあなたが先だよ」つい返してしまった。

「福山は言葉にならずとも、ずっと込み上げていました」フィードバックを伝えながら、私は泣いた。

先生が聞かれる。

「何を願って福山さんのところにきたの?」

「福山さんが少しでもらくにいられるようにと願いました」

 

他の学生はその問いにこう答えた。

「とにかく安全にと思いました」

それは福山さんのシナリオのテーマでもあった。

 

何を願ってきたのか。

その願いで関わりがまったく変わることを

福山を通して、私は体験した。

 

忘れらないロールプレイになった。

井元さん、ありがとう。